Act.1-7 Green Green
KEEF


 午後7時50分。もうすぐ、兄が帰ってくる。
 だが、ユリは少し迷っていた。兄が自分の嗜好を認めてくれたことはわかった。
 だが、果たして、兄は自分を「女」として愛してくれるだろうか?
 愛せるだけ熱を込めて愛しても、どこまでいっても自分たちは「兄妹」だ。どちらかがふと冷静になったとき、その関係を永続させることができるのだろうか?
 この場合、ユリが自分の思いに迷うことはない。自分の愛が冷めることは永遠にない。若さゆえの自信だろうが、その点、ユリには一点の迷いもない。
 問題は、リョウだ。リョウは現実家だ。どんなにものごとに熱中していても、リョウはある日、ふと気づいて一歩引き、今の自分を冷静に分析するクセがある。それは、リョウ自身も気づいていないリョウのクセだ。
 恐らく、リョウだけを見てきたユリだけが知っている。
 だから、怖いのだ。リョウがそうなったときに、自分から彼の愛を剥がさないように、ユリ自身にできるのか。
 妹としては、おそらくリョウは一生愛してくれるだろう。だが、それが「女」となると、いささかユリの自信も引き気味にならざるを得ない。
 リョウを一生、自分の籠の中から出さないように、努力を重ねるしかない。この点、「感情」に関しては、ユリはある意味、リョウよりも敏感だ。失うことの恐ろしさをよく知っているから、どこまで努力を重ねても、その努力が無駄になる恐ろしさが身にしみて、ユリを不安にさせる。

(じゃあ、お兄ちゃんが愛してくれるように努力するしかない。
 けど、どうすればいいんだろう? 三つ指突いて三歩下ればいいのかな? 明るく騒ぎまくるのは、お兄ちゃんすきそうにないしな……」

 そして、考えること20分、リョウが帰るギリギリまで、その努力は続いた。

「ただいま……」

 そして、リョウがバイクのキーとヘルメットを抱えて帰宅した。
 結局、今日は戦わなかった。
 朝に出会ったキングの一言がずっと気になっていたし、ユリとの関係をこれからどうするか、決めていないわけではなかったが、いざユリと対面するとそれに徹しきれるかどうか、絶対の自信があったわけでもない。
 結局、この兄妹は、状況に流されるだけ流されて、未だに自分の絶対の思いに辿りつけていなかったわけである。

 リョウがブーツを脱ごうとすると、そこに奇妙な光景が待っていた。
 なにを思ったか、ユリがまるで土下座のように頭を下げていたのである。よく見ると三つ指をついているのがリョウには分かったが、その姿勢にはまるで「慣れ」がなく、なにかを無言のまま謝罪して居るようにしか、リョウには見えない。

「お、お、お帰りなさいませ」

 100%の緊張に支配された声で、ユリが言った。声が震えている。やはり、なにかを謝罪しようとしている風にしか見えない。

「……えーと、なにやってんだ、ユリ」

「あ、あの、日本の良い奥さんは、こうやって旦那さんの帰りを待ってるっていうから、やってみた」

 頭を下げたまま、しどろもどろに返すユリ。
 いろんなことに不安になって、必死に考えたのであろう妹の努力に気づいて、リョウはなんだかおかしくなった。
 そして、この14歳の妹が、たまらなく愛おしくなった。

「ユリ」

「え? きゃあ」

 リョウは鍛え上げた腕力で妹を無理やり立たせた。ユリは緊張しているのか、体が硬い。
 リョウは不意にユリを左手で抱きしめると、耳元で何かをつぶやいた。その瞬間、ユリの身体が首まで真っ赤になる 。

「へっ!? ええ!?」

 ユリが驚いて抱きしめられたままリョウのほうを向こうとすると、その反動を利用するように、リョウはユリの唇に自分の唇を重ねた。
 ユリの歯はしっかりと重ねられ、力が入っている。ユリが、キスに不慣れであることが一目瞭然だった。
 リョウは、その重ねられた歯を、上から軽く舐めた。

「ひゃあ!」

 首まで真っ赤にしているユリが、背中を大きく震わせてからリョウから飛び跳ねようとしたが、リョウはその軽い身体をしっかりとつかんで離さなかった。

「お、お兄ちゃん……?」

「ユリ、歯をかみ締めないで。力を抜いてもっと自然に」

「はい……」

 急に言われても実行するのは難しいのか、再びリョウがキスをすると、ある程度は力が抜けたものの、まだ歯はかみ合ったままだ。
 リョウが、左手でその身体を抱きしめたまま、優しく右手でその顎を上から下に撫でてやる。
 繰り返し撫でてやると、やがて力が抜けてきたのか、がっしりとかみ合っていた歯が開き、門が開いた。
 リョウは、撫でていたあごを優しくつかむと、ここぞとばかりに舌を入れ込む。

「ん゛〜〜〜♥♥

 ユリは、為されるがままになっていた。身体だけではなく舌までも、リョウに抱かれていた。
 リョウの舌は複雑に動き、ユリの舌を絡め取って、吸い上げた。
 ユリは、体温がすべて頭に集中したのではないかと思うくらいに熱くなっていた。「何も考えられない」とは、こういうのをいうのかもしれない。
 腰のあたりがむずがゆくなり、全ての感覚が舌と腰に集中しているようにも感じる。とめどなくあふれ出る愛液が、自分の興奮の度合いを、強制的にユリに分からせた。

(やだ、立てない……)

 目がトロンとしてきている。「だらしない顔をしているだろうな」とは思ったが、自分では制御できない。
 ついに、ユリは力なく、リョウの腕から滑り落ちそうになった。
 だが、今度はリョウがそれを両手で抱きしめて、意外な行動に及んだ。
 スカートの中に、手を入れてきたのだ。

(あん、やだ……)

 さすがにこれは恥ずかしく、ユリは抵抗しようとしたが、リョウの若々しく力強い腕力の前には何の意味もなかった。
 そして、今日、ユリはあれだけオナニーをしていて、服を変えてないのだ。
 口をふさがれたまま、リョウの手がユリのショーツに触れる。びっしょりと濡れたそれは、いかにユリが興奮しているのか、それとも今日の行為で興奮しきっているのかのいい証拠だった。

「今日、何回オナニーしたんだ、ユリ?」

 死にたくなるほど恥ずかしい質問だった。しかし、答えなければいけない。そういう精神状況に、ユリは「追いつめられていた」。

「ん……7回……」

「俺の服でオナってたのか?」

「ん……うん……」

 誘導尋問しつつ、リョウの指の腹が、ショーツごしにユリの秘所にふれる。まるで、女性の扱い方を知っているかのような動きだったが、ユリには疑うだけの精神的余裕がない。
 そして。

「こんなふうに気持ちよかったのか?」

 言って、リョウは妹のクリトリスを、ショーツ越しに握りつぶした。

「んひゃあああ!」

 一瞬で、くぐもりがちだったユリの声のトーンが5段階ほど上がった。一瞬で軽い絶頂に導かれ、力なく抱かれていた身体が飛び上がりそうになる。
 だが、リョウは容赦しなかった。ユリのクリトリスを軽くつまみ強く捏ね上げ、快楽を与えるためだけの動きを繰り返した。
 ユリのショーツからは、まるで洪水のような愛液が足を伝って床に零れ落ちたが、それは止まることを知らず、ユリの快楽の嗚咽と供に零れ落ちた。

「いいい、イクイクイクイク! イグゥっ!」

「イクほど気持ちいいのか。今日一日、ずっと気持ちよかったのか」

「こ、こんなに、違っ、いい、またイク!」

 変化は急激に訪れた。急激にユリの身体が痙攣したかと思うと、まるでおしっこのように、ユリは愛液と体液を秘所から撒き散らした。そして、そのまま床に倒れこんだ。
 自分の愛液とおしっこにまみれ、呼吸もままならずユリは倒れこんで痙攣した。リョウにキスされたかと思ったら、経験したことのない快感が、連続して襲い掛かってきた。
 つまりは、リョウはこういうかたちで自分を愛してくれるのだろうか。
 いや、と、かすれいく意識の中で、ユリは思った。
 リョウは、強引にユリを「愛する」ことで、兄妹の壁を打破しようとしてくれたのだ。
 満足を口元に浮かべながら、今度こそユリは失禁しながら失神した。