その日、ストリートファイトの数試合を終え、リョウが帰路に着いたのは夕方だ。
 リョウはすでにサウスタウンのストリートファイターとしてはかなり有力な存在であり、彼の試合には多額の賞金や賭け金が動く。彼が二試合でも闘えば一般サラリーマンの二週間分の稼ぎに相当するだけの額が、彼の懐に転がり込んでくる。
 無論、勝負に勝てば、の話だ。敗北は彼に何も与えない。リョウが生きているのは、「敗北から学ぶこともある」という、砂糖に漬け込んだ蜜のような甘い世界ではない。
 負ければ一銭も入ってこないばかりか、もしも大口のスポンサーが背後にいた場合、彼らの利益を汚したということで、人生という舞台からの強制的な退場すらさせられかねない。
 それだけはない、敗者から一方的な嫉視を向けられて、物理的な害悪を被る可能性さえある。
 リョウが今日会ったジャックやキングのシマ(縄張り)では、そんな心配はしなくてすむ。彼らは悪は悪なりに、アウトローはアウトローなりに秩序を保っており、ジャックやキングはその秩序が外部要因によって狂わされることを酷く嫌う。
 よってリョウが彼らの縄張り内でのルールを犯さないでいる限り、ジャックやキングから手荒い出迎えを受ける心配はないのである。
 それは、ジャックやキングが多くの者に慕われ、彼らの取り決めに従っていることを意味する。徒党を組んで闘うことにリョウは興味はなかったが、その多くの者に慕われる彼らの魅力には興味を持っていた。
 リョウにも戦いを通じてよしみを結んだ友人は多くいる。だが、はっきりと愛情という形で彼に好意を示した相手は、妹のユリ一人だった。
 愛する妹の愛情に形として応えたい。その想いが、彼の中で大きくなっているのを、自覚せずにはいられない。

Act.1-11 THE LOVE
KEEF

 リョウはバイクを厳重に施錠すると、玄関のベルを鳴らした。自分の立場上、後を尾行されてユリが危険な目に逢う可能性もゼロではないので、家にいる間は決して鍵を閉め忘れないように、としつこいくらいに念を押してある。
 ユリも友人が多いので、彼女らが遊びに来るたびに確認を強制するのはかわいそうな気もしたが、この危険な街に住む以上は、最低限の注意も怠ることは出来ない。
 しばらくして、トレーナーとミニスカート姿のユリがドアを開けてくれた。そして、いつものように満開の笑顔で兄を出迎えてくれる。

「おかえり、お兄ちゃん。ご飯にする? お風呂にする? それとも……なーんちゃって!」

 尻尾があれば全速力で左右に振っていそうなほどの幸福さを笑顔に載せて、ユリが兄の右腕にしがみついた。
 すでに、ユリの愛情はある程度は形になって還って来ている。まだ身体の結合がないだけで、兄は自分の身体を愛してくれているし、今のところはそれで充分だとユリは思っていた。
 むしろ、自分の禁断の想いに好意的な反応が帰ってきただけで奇跡に近いのだ。その奇跡を手放さないように、ユリは兄の腕を放そうとしない。その健気さに、リョウは思わずユリを抱きしめた。

「!?」

 突然の抱擁に、嬉しさよりも早く驚きを覚えてユリが目をきょとんとさせたが、その言葉が出るより早く、兄が妹の唇を自分の唇でふさいだ。

「お、お兄ちゃん?」

 玄関から数歩。ユリが呆気にとられたように呟いたが、リョウの言葉がユリの反応を鈍らせた。

「そうだな、お前が欲しい。お前を抱くぞ」

「へっ!?」

 一瞬のうちに表情を真っ赤にして、兄の顔を凝視する。リョウは真剣な表情のまま、抱きしめた妹に問うた。

「もちろん、お前の意思を尊重する。無理強いは……」

 と、今度は兄の言葉が終わる前に、妹が兄の唇を自分の唇でふさいだ。いやだ、などと言うつもりは毛頭なかった。
 むしろ、これが奇跡の成就でなくて、なにが奇跡だというのだろう。
 ユリの手がリョウの首を抱きしめたのを「YES」の意思表示と受け取ったのだろう。リョウの右手が、ユリのミニスカートの間から浸入する。そして、ショーツの上から妹の秘所を愛撫した。リョウの指は、すでに妹の弱点を知り尽くしていた。
 ユリの呼吸が荒くなり、それに呼応するように下着が湿っていく。そしてその荒い呼吸が声としてはじき出された時、その身体が兄にしがみついたまま大きく震えた。
 わずか数十秒の愛撫で、ユリの身体は絶頂を迎えていた。兄の手で絶頂の快楽を覚えさせられたその身体は、本人の意思以上にその行為を受け入れているようだった。その表情は耳や首筋まで真っ赤になっていたが、キスをしたままのリョウからは確認できない。
 だが、力がやや抜けつつも、その腕はリョウの首筋を抱きしめたまま離そうとはしない。むしろ兄の身体と愛を離すまいと、必死にしがみついているようにも思えた。
 リョウはユリの秘所の愛撫を続けたまま、しっかりと天井に向けていきり立っている自身を、ズボンから取り出す。わずか二〜三歩で外に出られる場所で取り出されたそれ・・は、いかにも現実感を失調させたが、その持ち主も、これからそれを受け入れる側も、それを視認できる体勢ではなかった。

 兄の愛撫が止まったことに、絶頂を迎えたばかりのユリが抗議の視線を送りかけたが、それは一瞬だった。
 自分の下半身に、明らかな異物が侵入してきたことを自覚したのである。リョウは玄関先で立ったまま妹を抱きしめ、ショーツのマチ(股間)の部分をわずかにずらして、自分のモノを妹の体内に挿入したのである。

「んううっ!!」

 ユリが一瞬、くぐもった声をあげ、リョウもまずいと思ったのか動きを止めかけたが、ユリの身体の反応がリョウを止めた。
 軽いリョウが痛みすら覚えた妹の膣内は、兄のモノを締め付けたまま激しく脈動し、ユリの腰がガクガクと震えた。同時に、ユリの頭の中で光が爆発したような感覚が起こった。
 いや、むしろユリの幸福の総てが光と化して頭の中で炸裂し、同時に自分の秘所から何かが激しく流れ出ていくような感覚を覚えた。
 ユリの激しい潮吹きが、リョウのズボンをずぶ濡れにしていた。恐らくリョウもユリ自身も予測が出来なかっただろう。ユリは初体験の初めての挿入で、潮を吹くほど激しく絶頂していたのだった。
 ユリは鼻から激しく呼吸をしつつ、必死で兄にしがみついた。初めてとは思えないほどの快感が、次から次へと身体を通り抜けていき、自分でも何が起こっているのか理解が追いつかなかった。
 無論、痛みはあった。だが、それすらも愛する兄と結ばれた幸福の一部として、ユリの体内を駆け抜けていき、そのすべてをユリは受け止めた。
 せめて、この幸福を兄と共有したかった。兄が自分の体内に精を放つまでは意識を保とうと、必死だった。兄は、全ての幸福を自分にくれた。過去も、今も、そして恐らくはこれからも。
 これが禁断の愛であることは、よく理解している。それが分からぬ年齢でもないが、ユリは自分の与えられるものはすべて兄に与えたかった。幸福も、愛も、感情も、身体も、自分の命すらも。
 リョウも快楽を感じているであろうことは、ユリにも分かった。妹の初体験であるにもかかわらず、兄の動きには容赦がない。ユリの年齢からすれば凶器にも違いない男性器を、妹の腰に打ち付けてユリに快楽を与え続けている。
 それは、普段の思慮的な兄とは違う姿だった。彼自身も、快楽を感じてくれていたらいいと思いつつ、ユリのささやかな願いはかなわなかった。
 ユリは兄が自分の体内に精を放出する直前、ひときわ大きな絶頂に流されて意識を失ってしまったのである。

「くっ……!」

 凶悪な男性器から妹の子宮に精液を解き放つと、ようやくリョウは落ち着いて妹に目を向けられる余裕が出来た。そして、そのとき初めてユリが失神していることに気づき、慌てて妹を床に優しく横にした。
 その膣から兄の精液が零れ落ちる。彼がユリの体内にいかに大量の精液を流し込んでいたか、その証拠だった。
 ユリの身体は意識を失った後も、激しい快楽の余韻を表すかのように大きくビクン、ビクンと痙攣していた。劇的な初体験の後に、一気に意識を持っていかれた妹に、自分はどのように思われたのか。
 リョウは塗れた男性器を拭くこともしまうことも忘れて、妹のそばに寄り添っていた。