翌日、ユリはダイニングのソファで目覚めた。眠い目をこすって上半身を持ち上げた瞬間、

「いたっ」

 ……声が出たことで、逆に自分の股間の秘所がわずかに痛むことに気づいた。
 そして呆けていた頭脳が、昨夜にあった記憶を、ほぼ強制的に、そして一気に遡らせた。
 自分は兄と結ばれたのだ。それを思い出して、ユリの顔が瞬間湯沸かし器のように真っ赤に染まった。初めての体験としては信じられないほどの絶頂に押し流され、せめて兄が気持ちよくなるまで意識を保とうという努力もかなわなかったことも思い出した。
 自分の身体には毛布がかけてある。恐らく自分が意識を失った後、リョウが運んでかけてくれたのだろう。
 その優しさに惚れ直しながらも、ユリには思うところがないわけでもない。

『あの普通じゃない状況で、しかも初めてでイキまくるとか、私、ひょっとして変態か……?』

 ただ、どうやら兄が自分の中で気持ちよくなったことは確かなようで、そこは安心した。
 自分と兄が同時に気持ちよくならないと、ユリにとっては全く意味がなかった。いつも与えられるだけの快楽から、共有する快楽へ。それこそ、ユリの真の幸福だったから。
 と、そうこうしているうちに、きしむ音を立ててダイニングのドアが開いた。リョウが、新聞を持って立っていた。

Act.1-12 CHANGE THE WORLD
KEEF

「…………………………」

「…………………………」

 気まずい、というわけではないが、お互いに妙な沈黙が続いた。どちらから、何から話しても不自然な会話になりそうで、リョウは食卓の椅子に腰掛けたまま、ユリはソファに上半身を起こしたまま、言葉を出せないでいる。
 だが、その沈黙を破ったのはユリだった。このまま何日も黙っているわけにはいかないことは、お互いに分かっている。

「あ、あのっっ!」

 緊張のあまり、身体をガチガチに固まらせて長い三つ編みを揺らしながら、それでも兄に何か言おうと必死に口を動かしてみるが、とにもかくにも思考がまとまらない。
 気軽に挨拶をするような状況ではないし、感想を求めるのも変な話だ。とにかく何か言わなければ。

「あ、あの、ほ、本日は、おひ、おひ、お日柄もよく!」

 つい、そんな言葉が口から飛び出した。初体験の相手を前にした緊張感と、突拍子もない言葉を口にしてしまった恥ずかしさで、ユリは余計に顔を赤くして毛布にうずくまってしまう。
 リョウはユリのいわんとすること……というか気持ちを察したのだろう、一瞬、苦笑を閃かせた後、すぐに立ち上がってユリの隣に腰を下ろした。

「ひゃあ!」

 もはや、ユリは緊張の余り、声と思考と身体の動きが連動していない。思わず飛び上がらんばかりに腰が浮いたが、リョウの大きな手が自分の頭の上に乗ると、まるで飼いならされた猫のように不思議と緊張が飛んでいった。
 そして身体の力まで抜けていったようで、ちょこんと上半身を兄に預けた。

「昨日はすまなかったな、無茶なことをして」

「ううん、私も嬉しい。お兄ちゃんが私に応えてくれて、夢みたいだよ。
 これが夢じゃないって、信じていいんだよね」

「頬でもつねってみるか?」

「夢だったら嫌だから、やらない」

「身体は、痛くないか?」

「ちょっと痛いかな。でも、それも嬉しいよ。昨日のその……ックスの証拠だもん」

 やや恥ずかしさに顔を背けながらも、リョウに身体を寄り添えて離れようとはしない。
 夢のような幸福。自分から懇願して得た快楽と愛情ではなく、リョウから愛されて、求められて二人で共有した愛情と快楽だった。それが、ユリにとっては嬉しくて仕方がない。
「今が永遠に続けばいい」。そんなことを、ユリは考えたこともなかった。世界が変わればいいのに、と思ったことも、一度や二度ではない。それほど、ユリにとって世界は厳しかった。
 だが今、文字通り、ユリの世界は変わった。これまで以上に、何もかもを兄と共有できる。その幸福が、きっと自分をも変えてくれるだろう。希望ではない、確信がユリの中を廻っていた。

「なあ、ユリ」

 しばらくユリの頭を撫でていたリョウが、不意に何かを思い出したように声を出した。

「なに、お兄ちゃん?」

「風呂に入るか、シャワーでも浴びたらどうだ。着替えたほうがいいと思うし」

 ユリも、はたと現実に引き戻された。自分は昨日、リョウに抱かれて失神した、そのままの格好なのだ。
 不意に自分の状況を思い出して、再びユリの顔が首まで朱に染まった。昨晩、自分はとても恥ずかしいところを見られてしまったことを思い出したのである。
 だが、確かにこのままいても仕方ないので、シャワーを浴びることにしたのだが。

「ねえ、お兄ちゃん」

「ん?」

 ごくりと一度のどを鳴らせて、自分の兄を見上げた。

「……一緒に、シャワーあびない?」


「んあああっ、イグ、イグのッ!」

 二人して緊張して入ったシャワールームも、二人して裸になってしまえば昨夜の続きが展開されるのは、二人とも予想できていたのかもしれない。
 ユリが兄の前で緊張しながら全裸になり、タオルを取ろうと四つんばいになった時、リョウの「ああ、ユリ、すまん」の一言とともに兄の愛撫がユリの秘所を襲った。
 昨夜、あれだけ快楽に晒されたユリの女性の部分は、普段から兄の愛撫には鋭く反応するように半ば慣らされており、またリョウがユリの弱点を知悉していることもあって、ユリはわずかの愛撫であっという間に絶頂に追いやられた。
 昨夜、処女を散らしたばかりの妹の体調を心配してはいたものの、これほど激しい反応が返ってくると、むしろリョウも指が止まらなくなってしまった。
 ユリも一分と持たなかった。ぐちゅぐちゅと激しい液体の音がこだまする狭い室内で、すぐに二回目の絶頂が襲ってくる。しかも、昨夜と同じ感覚だった。床に向けて、ユリ自身が蛇口になったかのように激しい潮を噴出したのである。

「はっ、はひっ、はっ」

 ビクンビクンと身体を痙攣させ、ユリはタイルの床に身体を横たえたが、リョウはそれで我慢できなかったようだ。すかさずユリの腰を掴むと、昨夜以上に膨張した男性器をユリの腰に押し付けた。
 ふと我を取り戻したユリが思わず振り返ったが、その時にはすでに自分の体内に兄自身が侵入してきていた。そして、すぐにその先が自分の子宮に叩きつけられ、膣内を蹂躙し始めた。
 自分の膣と子宮が、自分の意思とは無関係にリョウの男性器を締め付け、締め上げた。昨夜の激しい動きとはまた違い、リョウは静かに、だが確実に妹の子宮口を突き上げ、そしてこすり上げた。
 何度も何度も強制的に送られてくる快楽信号が、早くもユリの正常な思考感覚を奪っていった。意思とは無関係に、快楽を受け入れる言葉が喘ぎ声となって口から放たれていく。

「ああ、あひっ、イク、イク、らめ、イク、あああ、ひぃ!」

 絶え間なく連続する絶頂の中でも、せめて兄の幸福を感じたかった。昨夜、かなわなかった願い、兄の射精を感じるまで、なんとか意識を保ちたい、それだけを必死に、何かに懇願するように、思い続ける。
 そして、今回はその願いがかなった。わけがわからぬまま自分の腰の奥に熱い脈動を感じる。兄が自分の中で射精してくれたのだと分かったのと同時に、ユリの意識が股間の快楽とともに抜けていった。
 今日、二回目の潮吹きは、兄の精を受け入れたユリの意識をも流していった。