夕食後。
 リョウが、明日からの三連休についてのプランを語った。それを聞いたユリも香澄も、思わず胸と秘所を熱くさせた。

 ――――旅行。

 ごく近場ではあるものの、この家ではなく山間のペンションで、二泊かけての調教旅行だ。
 ユリも香澄も、リョウに言われるままにこの週末はなんの予定も入れていなかったが、なるほど、以前からこれを考えていたらしい。

「服は行きと帰りに着る二着だけだ。下着も持っていくな。タオルも向こうにたくさんあるから、必要ない。あとの持参物は二人に任せる」

 リョウから飛ぶ細かい指示に、やや熱さを含んだ返事を返しながらも、二人は彼の本気を感じ取っている。いったい、なにをされるのか、なにをしてもらえる・・・・・・・・・のか。
 思わず、鼓動が快楽の予感に震えた。


Act.2-10 Real & Surface [4]
KEEF


 香澄がやや力なく食事の後の一息をつき、ユリが全て食器を下げたところで、リョウが一つ咳をして、話しかけた。なぜか居住まいを正している。

「で、ユリよ」

「はーい、なに?」

 呼ばれたユリはエプロンを外し、全裸になってリョウのところに足早に寄ってくる。
 恐らく、ユリが施した「手段」が早速、効いてきたのだろう。ユリは胸を高鳴らせつつ、それを顔に出さぬよう努力しながら、兄の足元にちょこんと座った。

「ユリ、お前、俺の食事に何か入れたか?」

 リョウにしてみれば、食後すぐあたりから、明らかに身体に変調をきたしているのだ。原因としてまず考えられるのは、ユリの作った夕食である。
 妹を疑うのも心苦しくはあるのだが、リョウは回りくどい言い回しが苦手なこともあり、ストレートに尋ねる。
 ところが、彼の足元に跪いた性奴隷ペットの妹は、いかにも嬉しそうな満面の笑みで大きく頷いた。

「うん、入れた!」

 いきなりの質問ではあったが、ユリにしてみれば当然というか、予想通りというか、とにもかくにも最善の結果が出つつあるのだ。これを喜ばずして何を喜べというのか。
 リョウとしては、突発過ぎて驚くしかないのだが。

「あー……、その、なんだ」

 リョウは、驚いたような呆れたような表情で、一息口ごもったあと、問うた。

「一応、なんだが……、何を入れたか、聞いていいか」

「えーとね、催淫興奮剤と陰茎硬度増強剤。よーするに、セックス・ドラッグをほんの少し」

「……………………………………」

 あっけらかんと明るい声で、とんでもない名前を出した妹を、リョウは呆然と見下ろした。

「えーと、手段を選ぼうという気はなかったですか?」

「だって、香澄が羨ましかったんだもん」

「どこで手に入れたか、聞いていいか?」

「んー、リー先生のところの薬局。なんだか、凄く感心してたというか、喜んでわけてくれたよ?」

「あの爺さんか……」

 リョウは、サカザキ家と何かと縁が深い中国人チャイニーズの老人を脳裏に思い浮かべる。古稀も過ぎたばかりで悪戯好きというふうな年齢でも性格でもあるまいに、今更好々爺こうこうやぶってどうする気なのか。
 ……が、とりあえず、リョウはリー老人のことを頭から追いやった。なにより、彼の身体(主に下半身)のほうが、大変なことになりつつあるのだ。

「さて、今更確認することでもないが、こうなった以上、どうなるか解るよな?」

 腕を組んだ飼い主から居丈高に見下ろされたユリは、胸を高鳴らせ、頬をほんのりと染めながら頷いた。

「はい、思いっきり、オシオキしてください」

 ユリは丁寧に三つ指をつくと、深々と頭を下げる。これからの出来事を想像するだけで、ユリは絶頂寸前の興奮にあるが、リョウはやや静かに命じた。

「それじゃ、後ろを向いて、背中に手を持ってくるんだ」

「え……と、こんな感じ?」

 やや意外さを感じながらも、言われたとおりにユリは兄に背を向け、手を後ろに回す。
 そのとき、両腕に何かをはめられた。がちゃん、という金属音がユリの耳に入る。

「え? ……え?」

 慌ててユリは両腕を動かしてみるが、それはしっかりと固定されたまま動かなくなっていた。
 リョウはユリの手首に手錠をかけたのだ。それは、金属の部分をしっかりとファーが覆っており、ちょっとやそっとでは腕が傷つかないようになっている、SM専用の手錠である。
 ユリは、暫く腕を動かしてみて、それを理解した。同時に、初めて兄の手で拘束されたのだという、実感も。

 ユリの鼓動が、一気に跳ね上がった。自分では自由に動かせないこの身体を、興奮剤で猛っている兄に蹂躙してもらえるという、ほんのちょっと未来の既成事実が、ユリを一気に絶頂へと押し上げた。

「あ……、あああ……んんっ!」

 兄に背中を向けたまま、ユリは身体を桜色に染めて、震えた。まだ何もされていないのに、力が抜けてしまって倒れそうになる膝を、なんとかユリは支えた。

「どうだ、痛くはないか」

「ん……大丈夫……」

 ユリは、兄の気遣いに答えながら、身体を兄の方に向けた。自身は興奮剤を飲んでいないのに、明らかにユリのほうがリョウよりも興奮していた。
 そんなユリを見下ろしながら、リョウは自分でズボンのジッパーを下ろしペニスを取り出す。それは、丸一日香澄を犯しぬいたとは思えぬほど、隆々と屹立していた。脇ではらはらと事態を見守っていた香澄さえ驚いたものだ。

 リョウは、そっとユリの耳元に口を近づけ、呟きよりもやや大きな声で言った。

「ユリ、お前を使う・・ぞ」

 その言葉で、またユリはイきそうになるが、なんとか踏みとどまった。彼女の主人がなにも楽しんでいないのに、彼女だけ快楽の海で失神するわけにはいかない。

「この身体は、御主人様のものです。ご自由に、使ってください……」

 ユリがたどたどしく言うのを満足そうに聞くと、リョウはゆっくりとユリの頭を掴む。そして、ユリの口に自分の肉棒を含ませた。

「少しの間、我慢しろよ」

 リョウが言うと、ユリは兄を見上げ小さく頷く。次の瞬間、リョウは妹の口内に、その巨根を突きこんだ。そして、ユリの頭を掴んだまま、乱暴に妹の口を犯した。
 口腔だけでなく咽喉にまで男根を突きこまれ、ユリは激しい咳感に襲われる。しかし、本来なら不快の産物でしかないはずのそれすら、今のユリにとっては、激しい快感となった。兄の手で本当に玩具にされるのは、ユリが願いながらも殆ど初めての体験だったが、その満足感、快楽感は、ユリの想像をはるかに越えていた。
 乱暴に突きこまれる兄の男根は、ユリにとっては「もう一人の飼い主」である。余りにも突きが激しく早いので、ユリは何度も咽そうになり、涙を浮かべそうになるが、それを見せるのは駄目だった。
 苦しそうにしているのを見せると、きっと兄はプレイを止めてしまうだろう。しかし、それでは意味が全くないのだ。兄に最後まで自分の身体を使ってもらう・・・・・・ことが、兄への忠誠と同じくらい、自分の欲望への忠誠・・・・・・・・・なのだから。
 ユリは頭の動きを主人に任せながら、必死で肉棒に舌を這わせ、舐り上げる。

 ユリ自身は興奮のあまり気付いていないが、脇で見ている香澄は、思わず目を皿のようにして二人を、特にユリを凝視していた。彼女の顔は苦しそうながらも恍惚の極みにあったが、その下半身は、滝のように流れ出る愛液が膝立ちの両腿を床までびしょ濡れにしていたのだ。

 そうしているうちに、リョウが少しだけ顔をしかめる。

「そろそろ射精すぞ。一番奥に出すから、飲めむんだ」

 ユリも、瞬間的に膨れ上がった肉棒を舌に乗せて、それを感じていた。感じた瞬間、肉棒がいきなり咽喉の奥まで突きこまれると、大量の精液がどっと発射された。
 咽喉の一番奥に精液がぶち当たる異様な感覚に、ユリはまた激しい咳感と一緒に底なしの快感に支配されていた。その精液の最初の一滴がユリの咽喉を通って食道に流れ込んだ瞬間、意識野で白い光が炸裂した。ユリは今にも倒れそうになる身体を支え、必死で兄の精液を嚥下した。
 香澄は思わず顔を手で覆いながら、それでもユリの姿から目を背けられなかった。ユリは両手を拘束され、乱暴に口に射精されながらも、愛液を垂れ流しながら絶頂を迎えていたのだ。
 目元を艶っぽく真紅に染め、兄の精液を咽喉を動かして必死で飲み込むユリの姿に、香澄も思わず身体を熱くさせた。今日一日、あれだけ徹底的に犯しつくされたにも関わらず、まだ香澄の被虐願望にも余裕があるようであった。

「くっ……」

 ユリの顔に股間を押し付け、最後の一滴まで妹の咽喉に流し込んだリョウは、ゆっくりと肉棒をその口から出した。それは、ユリの唾液にまみれて、てらてらと淫らに輝いている。

「さ、綺麗にするんだ」
「ふぁい……」

 もう意識と快楽が混濁してしまっているのか、ユリは頭を捕まれたまま、目前に突き出された肉棒に舌を這わせて、自分の唾液を舐め取る。ほとんど無意識の動作だった。彼女にとって兄がそうであるように、それは自分から奉仕するべきものなのだと遺伝子レベルで刷り込まれているかのように、時間をかけてユリは肉棒に舌を這わせた。