Act.2-17 Luv Urinater [4]
KEEF
買い物を終え車に荷物を詰め込むと、リョウは安全運転で車を走らせる。普段、大型バイクで走るときには、軽度の速度超過は珍しくない彼であるが、さすがに大切な同乗者が二人も乗っていると、話は別である。
会計を済ませた後、結局、リョウは大量の荷物を一人で車に詰め込む羽目になった。人目を避けたとはいえ、ユリと香澄は公共の施設の中で、度重なる絶頂を迎えており、体力以上に精神力を消耗して、大荷物を持つどころか、まともに歩くのも怪しい状態だった。
二人をそうしたのは他ならぬリョウ自身である。自分が言い出して、二人が楽しみにしていた旅行を出だしで終幕させるわけにもいかず、とりあえずは休ませることにしたのだ。
六月の高速道路は、ちょうどラッシュアワーの直後で、渋滞に遭遇することもなく車は目的地への好調に飛ばしていく。香澄は、窓の外を流れる清涼な風景を、窓を開けて体に感じていた。
先ほど生まれて初めて体験した屋外での絶頂の衝撃は、いくぶん和らいでいるが、それでも精神に刻まれた感覚は抜けそうにない。ユリがポツリと話したことがあるが、“本当の意味で支配される快感”というものがあるのならば、あれがそうなのだろうか。
今もそうだが、ユリと香澄の下半身には、バイブレーターが挿入され、その身体はロープによって拘束されている。リョウがその気になれば、いつでも、今この場所でも、香澄は彼の前に痴態をさらす事になるだろう。自分の生活のすべてが、リョウを中心に、彼の手のひらの上で回転しているのも、妙といえば妙な感覚ではあったが、同時に絶大な安心感に包まれてもいた。
格闘家としての藤堂香澄は、未だに極限流、そしてリョウ・サカザキの打倒を諦めたわけではない。父・竜白には、彼を一敗地に塗れさせ、ついに勝利をつかめないでいるタクマ・サカザキの存在があるように、自分にとっても同じ極限流、同じサカザキの血統に連なるリョウは、強大な敵として、自分の前に立ちはだかっている。
そんな彼を打ち倒すことが、藤堂流の後継者としての、自分の悲願であるはず……だった。
だが、最近になって香澄は思うようになってきている。リョウ・サカザキには、格闘家という顔とは別に、空手道場の主、即ち“経営者”としての一面がある。それは当然、自分にも当てはまるだろう。“藤堂流合気柔術継承者”としての自分は、“藤堂香澄”という人間を構成する、多くのパーツのうちの一要素でしかない。最も大きく、最も大切なパーツではあるが、あくまで香澄の“人格”の一つでしかないのだ。
格闘技者として、リョウ・サカザキを打倒したいと願う自分がいる一方、彼に仕える女として、先達であり親友であるユリ・サカザキに嫉妬する自分がいる。何れも自分で選択した道であり、その結果の現在であった。後悔などはしていない。毎日が、あらゆる意味で充実している。
もしも。香澄がリョウを打倒しえたとして、格闘技者としては、その結果に打ち震えるかもしれない。だが、「飼い主」と「性奴隷」としての関係はどうなる?
香澄は、歪なものと理解しているとはいえ、現在の幸福を捨てることは出来ないだろう、と思う。もしもリョウに嫌われたら、彼に捨てられたりしたらどんな気持ちになるか。現在進行形で彼に開発されている自分の精神と肉体が、彼なしで生きていけるかどうか。
――考えたくもなかった。
その相反する願望と欲望を、香澄は未だに整合できずにいるが、若さ、あるいは幼さのせいだと非難することはできないであろう。本来、香澄ほどの年齢の女性が、肉体的にも精神的にも、こうまで一人の男性の影響下に入ることは、稀であるだろうから。
性的な意味での感覚と肉体の急激な成熟に、人間的な精神の成長が、ややも伴っていないのである。もちろんそれは、現在、香澄を養育する立場にあるリョウに、責任の所在がある。
だが無論、リョウにはリョウの事情がある。彼は妹を見事に十年間育て上げたが、ユリと香澄とでは、事情も状況も、まったく異なるのだ。リョウがユリを育てていたとき、彼らの目的はただ一つ、「生きること」だった。他の選択肢が無い必死の生活の中で、ユリがリョウに身も心も預けたのは、生への足掻きにも似た渇望感が確かにあったのだ。
だが、現在は違う。香澄は、日本で豊かな選択肢の中で育ってきたし、リョウやユリも、ようやくその生活を手に入れた。人間的に成長を続ける香澄と同じく、リョウもまた、これまでに経験の無い「自分で生活を選択できる自由」に揉まれている最中なのだ。ユリや香澄がリョウに依存しているのとはまた異なる意味で、リョウもこの二人に依存しているのである。
いずれにしても、知識や技術とは別の場所で、その主従は、未だ発展途上だった。今日からの三日間が、その主従関係を次のステージに進めることを、香澄は九割の期待と一割の不安を、その小さな心に押し込めていた。
そして、リョウもユリも、きっと同じ思いでいることを、望んでいた。どういう未来を迎えようと、それは二人一緒。そうでないと、意味がないのだった。
「ところで、ユリ」
リョウがハンドルを握りながら、言葉だけを後部座席に向ける。リョウの後ろに座っているのはユリだ。
「なに、ご主人様?」
「いや……、今だけでいいから、少し離してくれないか? さすがに運転しにくいし、危ないんだが」
リョウが遠慮がちに言う。ユリは高速に乗ってからずっと、リョウの後ろから、ほぼ立ち上がるように首筋に抱きついていたのだ。
「えー、いいでしょ、別に。名運転手の腕の見せ所じゃない」
「いきなりハンデつきで期待されても困る。それに、何マイル出てると思ってるんだ。本気で危な いぞ」
香澄は、右後部座席から思わずスピードメーターに目をやると、なるほど、90マイル(145km/h)を指している。何らかの原因で急停車でもしようものなら、ユリ一人がフロントガラスをブチ割って道路に叩きつけられ、肉塊と化して遠くまで転がっていくだろう。
いや、ユリがリョウの首筋に抱きついていることを考えると、一緒にリョウの首から上がもげて飛んでいくかもしれない。それは、飛燕鳳凰脚などとは比べ物にならないほどのショッキングなダメージを、目撃者に与える筈である……。
「………………………………ぉぇっ」
一人でろくでもないことを考えて、香澄は胸を押さえた。案外、良くも悪くも想像力豊かな香澄である。不思議そうにユリがそれを見るが、リョウから離れようとはしない。
「あと少しで到着するが……。我慢できないか?」
「うん、出来ない。ずっと触れていたい」
「……ふむ」
それだけ直接的に愛情表現をされることは、リョウにとっても嬉しくないはずはないが、とりあえず状況が状況である。とはいえ、ユリが素直に離してくれるとも考えにくい。
「仕方ない」
「え?」
「最終手段だ、勘弁しろよ」
「最終手段って、なにが? ……ひゃぁあああっ!」
言って、リョウがハンドルを右手でハンドルを握ったまま、左手をポケットに入れた。そして、何かを小さく動かした。
次の瞬間、ユリのアナルに入れられたままになっていたアナルプラグが振動を始めた。ユリは中腰のまま内股気味に太ももを引き締め、リョウの首筋に絡ませていた腕に、ぎゅっと力を込める。
わずか半日で身体に覚えこまされた、アナルからの快感に耐えているようで、ふるふると身体を小刻みに震えさせた。
「あ……だ、だめぇ……止めて……」
一気に温度を上げたユリの吐息を耳元に感じながらも、リョウは手加減をしない。
「到着するまででいい、大人しくしていてくれたら止めてやる」
「や……だぁ……、離したくな……あああああッ!」
ついに我慢が頂点に達したのか、ユリはより力を込めて、リョウの首筋に抱きついた、というよりも、すがりついた。小さな絶頂を迎えて、そろそろ立って体重を支えることが難しくなってきている。
「ほ、ホントに……き、キツイ……から……」
ユリの小声での抗議を聞き流して、リョウはアナルプラグの震度を最高まで上げる。
「ヒィッ!」
それまで微弱にユリを侵していたアナルの異物が、派手にユリの内部を蹂躙し始める。徐々に精神を快楽に侵食され始めていたユリは、一気に“堕ちた”。
リョウの首筋を掴んでいた腕がずるりと剥がれ落ち、座席シートにどすんと尻餅をつく。視界の裏を一気に快楽の波に漂白され、ユリは我を失った。シートに爪を立てるように掴み、思わず腰が浮いた。
「ああああ、イクッ、イキますっ!」
髪を振り乱しながら、狭い車内で大きく身体を痙攣させ、絶頂の赴くままにユリは喚く。先ほどのモールで乱れた時は声を抑えたこともあり、その反動でより体感する快楽は倍化していた。
「どこが気持ちいいんだ、ユリ?」
冷静に問うリョウの声にも、考えて返答する余裕などありはしない。
「お尻がいいの! お尻、お尻でイクのぉっ! んぐっ、うぁあ……」
声が高くなり、時に裏返る。過去も現在も、そして未来も、兄にしか見せることのない痴態を振りまきながら、連続する絶頂の中、だらしなく足を開き、ビクンビクンと腰を上下に痙攣させる。
上半身は既にシートに沈み込み、ユリはひたすらアナルの中で暴れまわる異物に、正気と意識とを奪われた。
粘液のような白濁の世界に浸されたユリの脳が考え付くのは、ただ一つのことだった。兄の、リョウのペニス。あの逞しく聳え立つ肉の搭に、前でも後ろでもいい、ひたすら陵辱されたかった。徹底的に、かつ淫らに、犯して犯して犯しぬいて欲しかった。
だが、その切ない願いも、最後の快楽の横波に、呆気なく流される。
「ひぅあ、きちゃう、凄いのきてる! イ゛グッ! イ゛グイ゛グイ゛グッッッ! ゥゥッ」
思い切り腰を突き上げ、麻縄で拘束された秘所を丸出しにしながら、ユリは小さな噴火のように愛液をビュッと噴出すと、そのまま勢い良く腰を落とした。小さな痙攣を繰り返しながら、完全に意識を失っていた。
「……さすがに、ちょっとショックが強すぎたか」
ユリの声がしなくなったのを確認して、リョウはスイッチを止める。ユリの内部で暴れていたプラグが、ようやくその動きを停止した。
香澄は、声を発することもできず、気を失ったユリを見守るしかなかった。自分はまだアナル・セックスの快感は知らない。その調教を受けてはいないが、その当事者となれば、ユリのような痴態を、主人であり飼い主であるリョウに見せることになるだろう。
「………………………………………………」
香澄は、熱くなる一方の胸と頬を、軽く撫でた。香澄にとって、リョウにこのような姿を見せるのは、なんら恥ずかしいことではなかった。自分も知らない、「藤堂香澄」という人間を開発していくのは、リョウ・サカザキという人間であらねばならなかった。
六月の心地よい風を受けながら、車はハイウェイを降り、郊外の山間部にその方向を定めていた。
会計を済ませた後、結局、リョウは大量の荷物を一人で車に詰め込む羽目になった。人目を避けたとはいえ、ユリと香澄は公共の施設の中で、度重なる絶頂を迎えており、体力以上に精神力を消耗して、大荷物を持つどころか、まともに歩くのも怪しい状態だった。
二人をそうしたのは他ならぬリョウ自身である。自分が言い出して、二人が楽しみにしていた旅行を出だしで終幕させるわけにもいかず、とりあえずは休ませることにしたのだ。
六月の高速道路は、ちょうどラッシュアワーの直後で、渋滞に遭遇することもなく車は目的地への好調に飛ばしていく。香澄は、窓の外を流れる清涼な風景を、窓を開けて体に感じていた。
先ほど生まれて初めて体験した屋外での絶頂の衝撃は、いくぶん和らいでいるが、それでも精神に刻まれた感覚は抜けそうにない。ユリがポツリと話したことがあるが、“本当の意味で支配される快感”というものがあるのならば、あれがそうなのだろうか。
今もそうだが、ユリと香澄の下半身には、バイブレーターが挿入され、その身体はロープによって拘束されている。リョウがその気になれば、いつでも、今この場所でも、香澄は彼の前に痴態をさらす事になるだろう。自分の生活のすべてが、リョウを中心に、彼の手のひらの上で回転しているのも、妙といえば妙な感覚ではあったが、同時に絶大な安心感に包まれてもいた。
格闘家としての藤堂香澄は、未だに極限流、そしてリョウ・サカザキの打倒を諦めたわけではない。父・竜白には、彼を一敗地に塗れさせ、ついに勝利をつかめないでいるタクマ・サカザキの存在があるように、自分にとっても同じ極限流、同じサカザキの血統に連なるリョウは、強大な敵として、自分の前に立ちはだかっている。
そんな彼を打ち倒すことが、藤堂流の後継者としての、自分の悲願であるはず……だった。
だが、最近になって香澄は思うようになってきている。リョウ・サカザキには、格闘家という顔とは別に、空手道場の主、即ち“経営者”としての一面がある。それは当然、自分にも当てはまるだろう。“藤堂流合気柔術継承者”としての自分は、“藤堂香澄”という人間を構成する、多くのパーツのうちの一要素でしかない。最も大きく、最も大切なパーツではあるが、あくまで香澄の“人格”の一つでしかないのだ。
格闘技者として、リョウ・サカザキを打倒したいと願う自分がいる一方、彼に仕える女として、先達であり親友であるユリ・サカザキに嫉妬する自分がいる。何れも自分で選択した道であり、その結果の現在であった。後悔などはしていない。毎日が、あらゆる意味で充実している。
もしも。香澄がリョウを打倒しえたとして、格闘技者としては、その結果に打ち震えるかもしれない。だが、「飼い主」と「性奴隷」としての関係はどうなる?
香澄は、歪なものと理解しているとはいえ、現在の幸福を捨てることは出来ないだろう、と思う。もしもリョウに嫌われたら、彼に捨てられたりしたらどんな気持ちになるか。現在進行形で彼に開発されている自分の精神と肉体が、彼なしで生きていけるかどうか。
――考えたくもなかった。
その相反する願望と欲望を、香澄は未だに整合できずにいるが、若さ、あるいは幼さのせいだと非難することはできないであろう。本来、香澄ほどの年齢の女性が、肉体的にも精神的にも、こうまで一人の男性の影響下に入ることは、稀であるだろうから。
性的な意味での感覚と肉体の急激な成熟に、人間的な精神の成長が、ややも伴っていないのである。もちろんそれは、現在、香澄を養育する立場にあるリョウに、責任の所在がある。
だが無論、リョウにはリョウの事情がある。彼は妹を見事に十年間育て上げたが、ユリと香澄とでは、事情も状況も、まったく異なるのだ。リョウがユリを育てていたとき、彼らの目的はただ一つ、「生きること」だった。他の選択肢が無い必死の生活の中で、ユリがリョウに身も心も預けたのは、生への足掻きにも似た渇望感が確かにあったのだ。
だが、現在は違う。香澄は、日本で豊かな選択肢の中で育ってきたし、リョウやユリも、ようやくその生活を手に入れた。人間的に成長を続ける香澄と同じく、リョウもまた、これまでに経験の無い「自分で生活を選択できる自由」に揉まれている最中なのだ。ユリや香澄がリョウに依存しているのとはまた異なる意味で、リョウもこの二人に依存しているのである。
いずれにしても、知識や技術とは別の場所で、その主従は、未だ発展途上だった。今日からの三日間が、その主従関係を次のステージに進めることを、香澄は九割の期待と一割の不安を、その小さな心に押し込めていた。
そして、リョウもユリも、きっと同じ思いでいることを、望んでいた。どういう未来を迎えようと、それは二人一緒。そうでないと、意味がないのだった。
「ところで、ユリ」
リョウがハンドルを握りながら、言葉だけを後部座席に向ける。リョウの後ろに座っているのはユリだ。
「なに、ご主人様?」
「いや……、今だけでいいから、少し離してくれないか? さすがに運転しにくいし、危ないんだが」
リョウが遠慮がちに言う。ユリは高速に乗ってからずっと、リョウの後ろから、ほぼ立ち上がるように首筋に抱きついていたのだ。
「えー、いいでしょ、別に。名運転手の腕の見せ所じゃない」
「いきなりハンデつきで期待されても困る。それに、何マイル出てると思ってるんだ。本気で危な いぞ」
香澄は、右後部座席から思わずスピードメーターに目をやると、なるほど、90マイル(145km/h)を指している。何らかの原因で急停車でもしようものなら、ユリ一人がフロントガラスをブチ割って道路に叩きつけられ、肉塊と化して遠くまで転がっていくだろう。
いや、ユリがリョウの首筋に抱きついていることを考えると、一緒にリョウの首から上がもげて飛んでいくかもしれない。それは、飛燕鳳凰脚などとは比べ物にならないほどのショッキングなダメージを、目撃者に与える筈である……。
「………………………………ぉぇっ」
一人でろくでもないことを考えて、香澄は胸を押さえた。案外、良くも悪くも想像力豊かな香澄である。不思議そうにユリがそれを見るが、リョウから離れようとはしない。
「あと少しで到着するが……。我慢できないか?」
「うん、出来ない。ずっと触れていたい」
「……ふむ」
それだけ直接的に愛情表現をされることは、リョウにとっても嬉しくないはずはないが、とりあえず状況が状況である。とはいえ、ユリが素直に離してくれるとも考えにくい。
「仕方ない」
「え?」
「最終手段だ、勘弁しろよ」
「最終手段って、なにが? ……ひゃぁあああっ!」
言って、リョウがハンドルを右手でハンドルを握ったまま、左手をポケットに入れた。そして、何かを小さく動かした。
次の瞬間、ユリのアナルに入れられたままになっていたアナルプラグが振動を始めた。ユリは中腰のまま内股気味に太ももを引き締め、リョウの首筋に絡ませていた腕に、ぎゅっと力を込める。
わずか半日で身体に覚えこまされた、アナルからの快感に耐えているようで、ふるふると身体を小刻みに震えさせた。
「あ……だ、だめぇ……止めて……」
一気に温度を上げたユリの吐息を耳元に感じながらも、リョウは手加減をしない。
「到着するまででいい、大人しくしていてくれたら止めてやる」
「や……だぁ……、離したくな……あああああッ!」
ついに我慢が頂点に達したのか、ユリはより力を込めて、リョウの首筋に抱きついた、というよりも、すがりついた。小さな絶頂を迎えて、そろそろ立って体重を支えることが難しくなってきている。
「ほ、ホントに……き、キツイ……から……」
ユリの小声での抗議を聞き流して、リョウはアナルプラグの震度を最高まで上げる。
「ヒィッ!」
それまで微弱にユリを侵していたアナルの異物が、派手にユリの内部を蹂躙し始める。徐々に精神を快楽に侵食され始めていたユリは、一気に“堕ちた”。
リョウの首筋を掴んでいた腕がずるりと剥がれ落ち、座席シートにどすんと尻餅をつく。視界の裏を一気に快楽の波に漂白され、ユリは我を失った。シートに爪を立てるように掴み、思わず腰が浮いた。
「ああああ、イクッ、イキますっ!」
髪を振り乱しながら、狭い車内で大きく身体を痙攣させ、絶頂の赴くままにユリは喚く。先ほどのモールで乱れた時は声を抑えたこともあり、その反動でより体感する快楽は倍化していた。
「どこが気持ちいいんだ、ユリ?」
冷静に問うリョウの声にも、考えて返答する余裕などありはしない。
「お尻がいいの! お尻、お尻でイクのぉっ! んぐっ、うぁあ……」
声が高くなり、時に裏返る。過去も現在も、そして未来も、兄にしか見せることのない痴態を振りまきながら、連続する絶頂の中、だらしなく足を開き、ビクンビクンと腰を上下に痙攣させる。
上半身は既にシートに沈み込み、ユリはひたすらアナルの中で暴れまわる異物に、正気と意識とを奪われた。
粘液のような白濁の世界に浸されたユリの脳が考え付くのは、ただ一つのことだった。兄の、リョウのペニス。あの逞しく聳え立つ肉の搭に、前でも後ろでもいい、ひたすら陵辱されたかった。徹底的に、かつ淫らに、犯して犯して犯しぬいて欲しかった。
だが、その切ない願いも、最後の快楽の横波に、呆気なく流される。
「ひぅあ、きちゃう、凄いのきてる! イ゛グッ! イ゛グイ゛グイ゛グッッッ! ゥゥッ」
思い切り腰を突き上げ、麻縄で拘束された秘所を丸出しにしながら、ユリは小さな噴火のように愛液をビュッと噴出すと、そのまま勢い良く腰を落とした。小さな痙攣を繰り返しながら、完全に意識を失っていた。
「……さすがに、ちょっとショックが強すぎたか」
ユリの声がしなくなったのを確認して、リョウはスイッチを止める。ユリの内部で暴れていたプラグが、ようやくその動きを停止した。
香澄は、声を発することもできず、気を失ったユリを見守るしかなかった。自分はまだアナル・セックスの快感は知らない。その調教を受けてはいないが、その当事者となれば、ユリのような痴態を、主人であり飼い主であるリョウに見せることになるだろう。
「………………………………………………」
香澄は、熱くなる一方の胸と頬を、軽く撫でた。香澄にとって、リョウにこのような姿を見せるのは、なんら恥ずかしいことではなかった。自分も知らない、「藤堂香澄」という人間を開発していくのは、リョウ・サカザキという人間であらねばならなかった。
六月の心地よい風を受けながら、車はハイウェイを降り、郊外の山間部にその方向を定めていた。